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第4回 羽村市の湧水探訪

期日 2024年4月7日(日)

集合:時間場所 午前10時 青梅線羽村駅改札

まいまいず井戸→馬の水飲み場→根がらみ前水田(チューリップ畑)→一峰院(いっぽういん)、昼食→第1水源→水車小屋→多摩川べり(浄水施設)→羽村堰→羽村橋のケヤキ→羽村駅(解散14:30予定)

 


羽村市と言えば私たちにとってはなんと言っても、「玉川上水」がなじみ深いですが、今回はその次のなんと言っても有名な「まいまいず井戸」の見学から始めたいと思います。まいまいとはカタツムリの事でそのような形をしているということです。現地説明板には鎌倉時代の創建と推定されていて、さく井(せい)技術が未発達の時代に筒状井戸の掘りにくい砂礫層(崩れやすい)地帯に井戸を設ける必要から、このような形態をとるにいたったとあります。ここ武蔵野台地(多摩川~荒川)は地下水が深く、昔は深く掘る技術がないために生み出された形と考えられ、地域によっては昭和30年代まで利用されたそうです。掘る労力も、水を運ぶ労力も重労働だったでしょうが、垂直の井戸が掘りにくい関東ローム層の砂礫層地帯への井戸を造るためには、このような形態井戸が最も安全で確実な方法だったと思われます。 

地表面での直径約16m、底面の直径約5m、深さ約4.3mスリバチ状の窪地の中央に直径約1.2m、深さ5.9mの堀り井戸があります。地表面からは周壁を2周して井戸に達するようになっています。羽村駅標高145m-湧水標高(スリバチ深さ4.3m+堀井戸深さ5.9m)=約134.8m(推定湧水標高)

掘り井戸の中の様子、底の方に水面が見えます(ストロボ使用)。

上の絵は実踏の日がたまたまボランティアの保全作業の日で、幼いころここで水汲みをしたという方に出会いました。その方の話を元にネットから「撥(はね)つるべ」、「井戸のます」を引き出し、そして天秤棒を書き加えました。

 

撥ね釣瓶 → シーソーのような梃(てこ)の原理を使って釣瓶の上げ下ろしをするもの。反対には重りが結び付けられている。

釣瓶(つるべ)→ 井戸の水をくむために、縄や竿(さお)などの先につけて下ろす桶。

井桁(いげた)→ 井戸の上部のふちを、地上で井の字型に組んだ木の囲い。

 

天秤棒(てんびんぼう)→ 両端に桶や竹篭を縄で吊るして、そこに荷物を入れ、棒の中心を肩に担ぐ、棒には弾力があるので、荷物の揺れを吸収し、安定して運べる。

次に「馬の水飲み場」に向かいます。

この辺りではよく見られる多摩川の玉石を貼った壁面に水飲み場は穿たれています。

荷馬車のイメージ写真。深くえぐれた「わだち」の坂道を人馬一体となって物を運んだと思われます。

 

以下は現地説明版より

ここには、豊かな湧水を利用した馬の水飲み場がありました。坂の下に住む農家の人たちは、畑がハケの上(段丘)にあったので、この坂に大変苦労し、肥料や収穫物の運搬は荷車(にぐるま)を引く馬に頼っていました。このため急な坂をのぼった所に水飲み場を作り、馬をいたわりました。

 

明治27年(1894)に青梅鉄道が開通してからは、多摩川の砂利を羽村駅まで運搬する馬の水飲み場としても大いに利用されました。この坂は、近くに禅林寺(以前は境内に湧水があった)があるので、お寺坂と呼ばれ、明治時代中頃までは、荷車がやっと通れる程の道幅でした。小高い斜面を切り開いたこのような坂は「切通し」といわれるものです。

 

次に根がらみ前水田に向かいます。

「花と緑のまち」羽村市は「坂のまち」でもあります。羽村市の西部には何列もの急坂が(崖線)が走り、これらの崖線で区切られる段丘地域は古くから人々の生活の場となってきました(市史「自然」より)。

 

その中の一つ根がらみ(河岸段丘の名前)前水田は年間を通して活用されます。

写真は4月見ごろを迎えるチュウリップ畑、奥の高台が「根がらみ段丘」。

根がらみ前水田 初夏から秋にはお米をつくる。(写真提供:羽村市)

7月中旬から8月上旬にかけて花を咲かせる「大賀ハス」約2000年前のハスの実から咲いたと言われる古代ハスです。(写真提供:羽村市)

 

その根がらみ水田の奥まった所にあるのが一峰院(いっぽういん)。

湧水は本堂左手奥に設けられた日本庭園の池に、竹の樋から流れ落ちています。また、池から流れ出た湧水が山門脇を一条の細い流れとなって、途切れることなく流れています。

「中車(なかぐるま)水車」が架かる羽用水(車堀)に沿った一帯は江戸時代半ばから「根がらみ前水田」と呼ばれ、羽村市唯一の水田地帯でした。現在水車は動いていませんが、「中車水車小屋」ではカフェーを営んでいます。

水道水は100%地下水です。

一般的には河川の水を浄化して水道水としていますが、ここではすべて3つの水源(第1水源、第2水源、第3水源、深さ7~10mの浅井戸)から水をくみ上げています。根がらみ前水田にあるこの3つの水源は近くを流れる多摩川の浸透水ではないかと思われます。 また、地下水利用で話題に上る自治体はここ羽村市と昭島市、武蔵野市の3市です。

根がらみ前水田にある右の建物が「第1水源」

根がらみ段丘標高約135m-10m=約125m湧水標高と推定

多摩川べりにある「浄水場管理棟及び浄水池」

羽村堰 左玉川上水第1水門、右多摩川

羽村橋のケヤキ(東京都指定天然記念物)

玉川上水羽村橋北側の奥多摩街道に面して位置し、幹回りが7.2m、樹高が約25mで、樹齢は400年とも600年ともいわれ、ちょうど段丘の崖直下に立っています。段丘崖は湧水に富み、このケヤキの樹下にもかつては豊富な水が湧きだし、樹木の生育を助けてきたと考えられます(現地の看板より)。私は20年ほど前から見ていますが、以前は根本に水たまりのようになった湧水がありました。

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